漢方薬としての高麗人参の特性

高麗人参には滋養強壮、免疫機能の改善、肝機能の改善や血糖、血圧の改善効果などが認められ、古くから様々な漢方処方に加えられてきました。高麗人参単独でも生薬として様々な効能が認められますが、その他の生薬と組み合わせ、漢方薬として処方することで多様でより高い効果を期待することができます。高麗人参の生薬としての特性と主な漢方処方についてまとめてみました。

高麗人参の生薬としての特性

生薬としての高麗人参の性質は、五気では温、五味では甘、苦と表現されます。

五気とはその生薬が体内に入った時に体をどの程度冷やすのか、温めるのかを5つの段階で評価したもので、温という性質を持つ高麗人参には穏やかに体を温め、代謝を活性化する効果が見られます。

また五味とは生薬の持つ味の評価ですが、漢方薬において味は薬効と結びついていると考えられています。甘い味は体力や栄養を補ったり、筋肉の緊張を緩めて痛みを取り除くなどの作用があると考えられています。また、苦い味には解熱作用や水分を排出して解毒する作用があると考えられます。
漢方薬は、このような植物などの生薬を漢方医学の理論に基づいて組み合わせることで、様々な病気により有効に対応できるようにしたものです。

五気 作用 主な生薬
消炎解熱などの体を冷やす効果 黄連、大黄
より穏やかな冷やす効果 粳米、薄荷
平常を保つ効果 ウイキョウ、甘草
より穏やかな温める効果 厚朴、紫蘇葉、高麗人参
体を温め新陳代謝を亢進する効果 附子、乾姜
五味 作用 主な生薬
熱を発散し、表面の熱を下げる。体の循環を促す。 生姜、紫蘇葉
体液や血を補い、内臓や筋肉を引き締める。 山茱萸、芍薬
栄養を補い、緊張を緩める。 高麗人参、甘草
鹹(塩辛い) 詰まっているものを柔らかくして押し流す。 牡蛎、海藻
熱を鎮めて水分を代謝させる。 黄連、大黄

高麗人参が配合される、主な漢方薬

人参湯(にんじんとう)

配合生薬:高麗人参、甘草、蒼朮、乾姜
効きやすい体質:やせ形で体力がなく、冷え性
薬効:胃腸全般の調子をよくする効果があります。胃腸が弱く食が細い、嘔吐、下痢、胃の痛み、腹痛、急性胃炎、慢性胃炎といった症状に処方されます。

人参養栄湯(にんじんようえいとう)

配合生薬:高麗人参、当帰、芍薬、桂皮、黄耆、陳皮、地黄、白朮、茯苓、五味子、甘草、遠志
効きやすい体質:やせていて、顔色や爪の色が悪い。手足が冷えて眠りが浅い。貧血気味。無気力で疲れやすくおとなしい。
薬効:体の元気を補い栄養状態を改善するため外科手術や産後の回復に使われます。寝汗や冷え性、貧血によるめまいなどの症状にも処方されます。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

配合生薬:高麗人参、蒼朮、黄耆、当帰、生姜、甘草、柴胡、陳皮、大棗、升麻
効きやすい体質:体力がなく、疲れやすい。風邪をひきやすい。全体におとなしい性質で声に張りがなく小声である。
薬効:胃腸の消化吸収能力を高めて食欲を増進し、免疫力や体力、気力を増強します。全身倦怠感をとるために処方されることも多く、癌などの消耗性疾患、術後、産後などの際に体力回復のために使われます。

桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

配合生薬:高麗人参、桂皮、蒼朮、桂皮、乾姜
効きやすい体質:体力があまりなく、冷え性で顔色が悪い。胃腸が弱く食が細い。胃のあたりに水がたまった音がする。胃もたれが多い。お腹が冷えると下痢の症状が出る。
薬効:胃腸の機能を整えます。冷えとともに出る動悸や、慢性の頭痛にも処方されます。また、胃腸の症状を伴う風邪にも効果があります。

黄連湯(おうれんとう)

配合生薬:高麗人参、黄連、半夏、甘草、乾姜、桂皮、大棗
効きやすい体質:筋肉質でがっちりした体形の人。声に張りがあり比較的体力がある人。
薬効:二日酔いによく使われます。吐き気や嘔吐、食欲不振や腹痛、急性胃炎に処方されます。

釣藤散(ちょうとうさん)

配合生薬:高麗人参、釣藤鈎、陳皮、茯苓、半夏、菊花、生姜、甘草、防風、石膏、麦門冬
効きやすい体質:比較的体力があり冷え性でない人。神経質な人。
薬効:高血圧や緊張に伴う慢性的な頭痛や頭重感に効果があります。抑うつや不眠にも使われます。

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) 

配合生薬:高麗人参、黄連、黄芩、生姜、半夏、大棗、甘草
効きやすい体質:比較的体力があり筋肉質。みぞおちのつかえ感がある。不安や緊張がある。
薬効:不安や緊張でお腹が鳴ったり下してしまう際に使われることがあります。消化不良や胸焼け、口内炎にも処方されます。

まとめ

上記に挙げた処方は臨床でよく使われる処方の一部で、その他にもたくさんの高麗人参を使った漢方薬があります。高麗人参を使った漢方薬には、体力の回復、消化管機能の改善、ストレスによる症状の緩和といった効果を期待して使われるものが多いです。どの漢方が最適かわかり難い場合には薬局や診療所で相談してみるとよいと思います。高麗人参は飲みやすい形のサプリメントも多く出回っており、手軽に使えるのでこちらを取り入れてみるのも良いかもしれません。

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